03-6272-4372営業時間 9:00〜18:00

防災メディア

トップページ>防災メディア>日本の BCM は BCP に偏りすぎていないか?

日本の BCM は BCP に偏りすぎていないか?

2017/08/25

トピックス

(株)サイエンスクラフト
防災部 田代邦幸

弊社でもコンサルティングを提供させていただいている「事業継続マネジメント」(Business Continuity Management:BCM)とは、災害や事故によって事業活動が中断されてしまうような事態に対して、必要な対応力を備え、維持することによって、事業中断による様々な損失が致命的にならないようにするための活動をいいます。
このような説明を読んでピンと来ない方であっても、弊社の Web サイトにアクセスされるような方々であれば、恐らく「BCP」という言葉はご存知なのではないでしょうか。
BCP とは Business Continuity Plan の略で、日本語では「事業継続計画」と呼ばれます。災害や事故などによって中断された事業を効果的に再開・復旧させるための必要事項を文書化したもので、BCM に取り組むことによって作成される、成果物のひとつです。
つまり、BCM あっての BCP なのですが、日本ではなぜか BCP という用語の方が先に普及しており、BCM という用語や考え方、方法論は、BCP に比べるとあまり定着していないようです。中には、まず BCP を作ってから、その BCP を維持・改善するための活動が BCM である、と整理されている例もあります。
もちろん、そのような考え方が間違っているという訳ではありません。BCP は BCM の中で特に重要な成果物ですので、まず BCP を作ることをプロジェクトのマイルストーンとして設定するのも現実的な方法だと思います。しかし、もともと欧米で開発された BCM が日本に輸入されるプロセスの中で、どういう訳か BCP 偏重の BCM になってしまい、その弊害も散見されるようになりました。
弊害とは例えば次のような現象です。

・事業継続や災害対策に関することを、とりあえず何でも BCP に詰め込もうとする
・BCP を作ること自体が目的になってしまう
・とりあえず BCP のヒナ形に穴埋めするだけで済ませてしまう
・BCP を作ったところで力尽きて活動が止まってしまう

BCP を作るのは大事ですが、BCP を作るだけで災害などに対する対応力が向上する訳ではありません。図に示したような活動に継続的に取り組みながら、計画の不備を見つけてアップデートしたり、事業再開や復旧に必要な機材などの準備をしたり、従業員の教育訓練を行うなどの努力を重ねて、少しずつ対応力を高めていく必要があります。
もし仮に、立派な BCP を作ったまま放置している企業と、簡素な BCP を作った後で BCM の活動に継続的に取り組んでいる企業があったとしたら、実際に災害が発生した時に対応力を発揮できるのは後者の企業です。ですから皆様には、あまり BCP を作る作業に重きを置きすぎずに、最初から継続的に BCM に取り組むという方針で、活動を始めていただきたいと思います。
当社ではこのような考え方に基づいて、BCM のコンサルティングを提供させていただきます。

以上

図 BCM に含まれる活動
(出典)ISO 22313:2012 をもとに弊社作成(平易な用語に書き換えてあります)

サイエンスクラフトとは...

サイエンスクラフトは防災計画の作成や防災訓練支援を数十年に渡って行っているコンサル会社です。お問い合わせはこちらまで。